歯科口腔外科
歯科口腔外科とは
歯科口腔外科は、歯や歯ぐきの治療だけではなく、親知らずの抜歯、顎関節症、良性腫瘍、外傷、歯性感染症をはじめ、口腔粘膜や唾液腺の疾患、嚢胞(のうほう)・腫瘍性疾患などのお口の中の多岐にわたる症状・疾患が対象となります。
外科手術が必要になることも多く、高血圧や糖尿病、心疾患などの全身の病気を持つ患者さんの治療も、全身状態に配慮しながら行っています。病気の知識や手術における全身管理も必要になるため、歯科だけでなく医科領域の広い知識と技術が求められる専門性の高い分野です。
お口周りや口の中の症状は日常生活に支障をきたしますので、少しでも気になる症状があれば、早めに受診して適切な診断・治療を受けましょう。
日本口腔外科学会
口腔外科専門医による
診療
当院の院長は、日本口腔外科学会 口腔外科専門医です。
日本口腔外科学会 口腔外科専門医は、歯科医師(または医師)の免許を取得した後に必要な初期臨床研修を終え、さらに6年以上の期間を日本口腔外科学会が認定する医療機関にて、口腔外科の診療と学術活動に専念し、一定の実績を積んだ場合にのみ申請資格を得ることができます。その上、書類審査、筆記診査、面接、手術診査のすべてに合格しなければなりません。
資格取得後も、専門的な知識・技術を持つ歯科医師として高い臨床レベルを維持するために、継続的な研修実績や学識・診療技術の向上が求められます。
専門性の高いスタッフ
当院の歯科衛生士は基幹病院での勤務経験があるため、有病者の口腔ケアの経験も豊富です。治療中だけでなく、治療後のメンテナンスも全身状態に配慮しながら行います。また、当院には薬剤師が在籍しているので服用中のお薬についてもご相談いただきながら、歯科治療を受けていただくことができます。
高水準の治療をもっと身近なかたちで地域の皆さんにお届けしてまいります。
当院で対応可能な
口腔外科疾患
埋伏歯
親知らずの抜歯
歯科口腔外科で最も多い治療は、親知らずの抜歯です。
「横や斜めを向いて生えている」「むし歯になっている」「炎症の原因になっている」といった場合は、抜歯をおすすめしています。ただし、親知らずは必ずしも抜歯が必要ではありません。まっすぐ生えていて、歯磨きもきちんとできている場合は、かみ合わせの一部として機能するので抜かないこともあります。
当院では必要に応じてCT画像の撮影を行い、メリット・デメリットをきちんとお伝えして、ご納得いただいてから抜歯を実施しています。親知らずを抜いた方がよいかどうか気になる方は、まず一度ご相談ください。
日本口腔外科学会 口腔外科専門医として、医療圏を問わず、矯正歯科医院やかかりつけ歯科医院からのご紹介も幅広く受け付けています。
紹介状をご持参いただきますと、スムーズなご案内が可能です。ただし、全身麻酔が必要と判断した場合などは、大学病院または地域の基幹病院をご紹介いたします。
過剰歯の抜歯
乳歯は20本、永久歯は親知らずを含めると32本存在します。それよりも多くできてしまった歯を「過剰歯」と言います。その中で最も多いのが正中埋伏過剰歯(前歯の真ん中の歯の間に余分に生えている歯)です。
これらは永久歯がスムーズに生えてこない萌出(ほうしゅつ)障害や歯並びが悪い状態の歯列不正を引き起こしたり、隣にある歯を吸収したり(外部吸収)、膿の袋(嚢胞(のうほう))が生じることもあるため、抜歯を行う場合が多いです。
永久歯への生え換わりの時期や定期検診でレントゲンを撮った際に見つかることも多く、抜歯時期については年齢や周囲の永久歯への影響も考慮して決めていきます。
開窓牽引(かいそうけんいん)術
歯ぐきの中に埋まっていて生えてこない犬歯や小臼歯など、歯並びやかみ合わせにとって必要な歯である場合には、矯正治療によって埋伏歯を正常な位置まで誘導する治療法(開窓牽引術)が選択される場合があります。
歯科口腔外科と矯正歯科をそれぞれ担当する歯科医師が協力して治療を行います。当院では埋伏している歯の頭を口の中に露出させ、露出した歯にボタンやワイヤーなどの装置をつけます。口の中の矯正装置と連結させて、埋伏している歯を本来あるべき位置まで引っ張り出す治療法です。
※矯正治療を行う歯科医師からの紹介状と埋伏歯につける装置(ボタン、ワイヤーなど)を必ずご持参ください。
顎関節症
顎関節症の治療では、症状を悪化させないような生活指導を行うとともに、咀嚼筋マッサージ・開口訓練などの理学療法や、スプリントと呼ばれるマウスピースを口の中に装着します。症状に応じて、消炎鎮痛剤や筋弛緩薬の投与などの薬物療法も併用します。
多くの場合、2週間から1ヶ月程度で症状の改善が期待できます。難症例の場合は、放射線診断医によるMRI検査や大学病院の顎関節外来と連携して治療を行います。
良性腫瘍
当院では、舌・口唇の粘液嚢胞(唾液の溜まった袋)、歯肉腫瘍(歯ぐきにできる腫瘍)の切除、顎骨内腫瘍(顎の骨の中にできる腫瘍)などの診断と治療を行っています。
患者さんの症状や病歴、レントゲン画像、CT画像、放射線診断医によるMRI検査などを用いて臨床診断を行います。また生検や手術によって得られた検体は、必ず病理診断を行っております。
患者さんに安心して診療を受けていただけるように、病理医による的確な診断を行い、治療方法の選択や治療内容に反映できる体制を整えております。
なお、全身麻酔を要する治療や、悪性腫瘍が疑われる場合など、より高度な医療が必要と判断した際は、大学病院など高次医療機関をご紹介いたします。
歯性感染症
歯性感染症は、主にむし歯や歯周病を引き起こす細菌による感染が、顎の骨周囲や首の組織などにおよぶ状態です。通常は身体の中にいても無害な細菌が疲労やストレス、ステロイド剤の使用、悪性腫瘍、ウイルス感染、糖尿病などの代謝疾患や膠原病などによって免疫力が低下しているときに感染症を発症します。
重症化すると歯ぐきを切って膿を出す手術を行う場合もありますが、初期段階で的確な治療を始めることができれば、お薬の服用や手術を伴わない処置で炎症が治まることもあります。
歯ぐきが腫れてきたなどの症状がある方はお早めにご相談ください。
外傷
外傷には、歯槽骨骨折(歯が生えている部分の骨の骨折)、歯牙破折・脱臼(歯が折れる、グラグラする、抜ける)、口唇・舌などの顔面・口腔軟組織損傷(唇・舌・頬などの損傷)などがあります。
特に顔面は転倒や転落、交通事故や作業事故、スポーツでの衝突など、さまざまな原因により外傷を受けやすい部位です。「転んで歯が折れた、グラグラしている」「唇・舌・頬を噛んで切った」などの場合は当院までご相談ください。顎や歯の状態、かみ合わせなども総合的に判断して治療します。
歯が折れた、抜けたときには
転倒や事故などで歯が折れたり抜けたりした場合には、適切な対処により元の位置に戻せる可能性があります。
歯が折れた、抜けた場合は状況に合わせて対処法をお伝えしますので、なるべく早く歯科医院にお電話でご連絡ください。
歯の移植術
当院では、歯を失った時の選択肢として、自分自身の親知らずや埋伏歯(機能せず骨の中に埋まっている歯)をドナー歯として移植する「歯牙移植(しがいしょく)」という治療法を取り入れています。
一度抜いた歯が別の場所でも機能する理由は「歯根膜」にあります。歯根膜とは、歯の根の周りを覆っている薄い膜で、再生能力の高い細胞が含まれています。この膜ごと歯を移植することで、移植先でも歯と骨が再結合し、歯が再び機能するようになるのです。
ご自身の歯を移植するため、ほかの治療法に比べて自然な噛み心地を再現することができます。また、健康な状態で親知らずや埋伏歯が移植できること、さらに提供する歯と移植先の歯の大きさや形が合っていることなどが条件で、保険適用が可能になります。
ただし、移植が成功するためには、いくつかの重要な条件を満たす必要がありますので適応できるかどうかについては、一度、当院までご相談ください。
対応している
歯科口腔外科疾患
- 埋伏歯(親知らず、過剰歯、開窓牽引術)
- 顎関節症
- 歯性感染症
- 外傷(歯槽骨骨折、歯牙破折・脱臼、口唇・舌などの顔面・口腔軟組織損傷)
- 良性腫瘍(舌、口唇の粘液嚢胞、歯肉腫瘍の切除、顎骨内腫瘍など)
- 歯根嚢胞摘出術、歯根端切除術
- 舌小帯、上唇小帯形成術
- 口蓋隆起、下顎隆起の切除術
※より精密な検査や専門的な治療が必要だと判断した場合には、地域の基幹病院や大学病院などに紹介いたします。